産業界がSDGsに取り組むために
SDGsが産業界にとって重要な理由
持続可能な開発目標(SDGs)は、国連加盟国の193ヵ国が2030年までに達成を目指している、世界共通の目標です。社会・経済・環境の3側面において、現代社会が直面している課題に対する17の目標と、169のターゲットが設定されています。
SDGs達成のために重要な役割の一翼を担っているのが、産業界(企業)です。産業界がSDGsに取り組むことで社会的責任を果たすだけでなく、以下のような効果も期待できます。
- ①将来のビジネスチャンスの見極め
- ②持続可能な経営による企業価値の向上
- ③ステークホルダーとの関係の強化、新たな政策展開との同調
- ④社会と市場の安定化
- ⑤コミュニケーションのための共通言語として活用
このように、SDGsに取り組むことによって産業界は「社会課題の解決」と「ビジネス成長」を両立させた持続可能な経営を実現することができます。
SDG Compassの「5つのステップ」
自社の事業にSDGsを組み込み、経営を進めていく具体的な方法は、国連グローバル・コンパクト(UNGC)及び国連開発計画(UNDP)が共同で作成したSDG Compassの「5つのステップ」で細かく解説されています。
「5つのステップ」は、企業がSDGsを経営戦略と整合させ、SDGsへの貢献を測定・管理するために提示されています。ステップ1を経て、ステップ2〜5を繰り返し行うことがSDGsをより強固に経営に組み込む上で重要です。
以下で各ステップについて解説していきます。
ステップ1 SDGsを理解する
ステップ1では、SDGsについて知り、企業活動にとってSDGsがもたらす機会と責任を理解します。
SDGsの概要のみならず、策定された経緯や、企業による活用方法等を理解することで、企業がSDGsに取り組むことの重要性や、自社事業との関係性が見えてきます。以下の3つの項目に沿ってSDGsを理解していきます。
- ①SDGsとは何か
- ②企業がSDGsを利用する理論的根拠
- ③企業の基本的責任
ステップ2 優先課題を決定する
ステップ2では、産業界がSDGsに影響を及ぼしている、または及ぼす可能性のある領域を特定し、優先課題を決定します。優先課題は以下3つの項目に沿って決定されます。
- ①バリューチェーンをマッピングし、影響領域を特定する
- ②指標を選択し、データを収集する
- ③優先課題を決定する
各企業にとって17の目標全てが等しく重要であるわけではなく、事業戦略によって各目標に対する貢献度や付随するリスクは異なります。
ステップ3 目標を設定する
ステップ3では、ステップ2で決定した優先事項に基づいて目標を設定します。目標を設定することは、産業界におけるSDGsの達成度を高める上で非常に重要であり不可欠です。目標設定に関するステップは以下の 4つの項目で構成されます。
- ①目標範囲を設定し、KPI(主要業績評価指標)を選択する
- ②ベースラインを設定し、 目標タイプを選択する
- ③意欲度を設定する
- ④SDGsへのコミットメントを公表する
また、具体的で、進捗状況を計測可能な目標を設定することが望ましいです。
ステップ4 経営へ統合する
ステップ4では、SDGsを経営に統合し、具体的な取り組みを開始します。以下の3つの項目を経て、SDGsを経営に統合します。
- ①持続可能な目標を企業に定着させる
- ②全ての部門に持続可能性を組み込む
- ③パートナーシップに取り組む
持続可能な目標を企業に定着させるためには、経営トップの主導が特に重要となります。また、大幅な組織改革を成功させるには、その改革の種類を問わず、経営幹部による積極的なリーダーシップが鍵となります。
さらに、企業単独でSDGsに取り組むことは難しいとされており、社内だけでなく、社外とのパートナーシップを構築し、SDGsに取り組むことが推奨されています。
ステップ5 報告とコミュニケーションを行う
ステップ5では、自社のSDGsに関する取り組み内容及び、その社会貢献度を外部に示し、継続したコミュニケーションをとります。定期的に社会課題に対する自社の取り組みを発信し、コミュニケーションをとることは、ステークホルダーとの関係を強くするだけでなく、企業の価値向上に繋がります。また、社内への発信は、組織全体のSDGsに対する関心とモチベーションを高め、取り組みを向上させることに繋がります。以下の2つの項目に沿って外部とのコミュニケーションを行います。
- ①効果的な報告とコミュニケーションを行う
- ②SDGs達成度についてコミュニケーションを行う
外部に発信した後は、再びステップ2に戻り、手順を繰り返していくことでより強固にSDGsを経営に統合することができます。
SDG Compassとは
「5つのステップ」の詳細な内容はSDG Compassに記されています。 SDG Compassとは、2016年3月に国連グローバル・コンパクト(UNGC)と国連開発計画(UNDP)がSDGsを導入する企業の導入指針として共同で作成された全30ページに渡る資料であり、各企業の事業にSDGsがもたらす影響を解説するとともに、「5つのステップ」を通じて、持続可能性を企業の戦略の中心に据えるためのツールと知識を提供しているものです。SDG Compassは、大企業だけに当てはまるものではなく、中小企業やその他の組織も、SDGsに取り組む基礎として活用ができます。
SDG CompassはPDF形式でWeb上に公開されており、以下のURLより無料で閲覧及びダウンロードが可能です。
SDGsに取り組む意義・取り組みのヒント
- 資料名:
-
すべての企業が持続的に発展するために- 持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド -[第2版]
- 発行組織名:
-
環境省
- 発行年月日:
-
2020/3
- 資料の概要:
-
『すべての企業が持続的に発展するために- 持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド -[第2版]』は日本の環境省が発行する、SDGsを活用するためのガイドで、主にこれからSDGsに取り組み始める中小規模の企業や事業者を対象としています。
- 資料名:
-
中小企業のためのSDGs活用ガイドブック
- 発行組織名:
-
中小企業基盤整備機構
- 発行年月日:
-
2022/4
- 資料の概要:
-
『中小企業のためのSDGs活用ガイドブック(全国版)』は日本の独立行政法人である中小企業基盤整備機構が発行する、中小企業向けのガイドブックです。
- 資料名:
-
地方創生SDGs金融を通じた自律的好循環の形成
- 発行組織名:
-
内閣府地方創生推進事務局
- 発行年月日:
-
2022/9
- 資料の概要:
-
『地方創生SDGs金融を通じた自律的好循環の形成』は地方創生SDGs金融に関する日本の地方創生推進事務局が発行した資料です。
- 資料名:
-
地方創生SDGs・ESG金融調査・研究会
- 発行組織名:
-
内閣府地方創生推進事務局
- 発行年月日:
-
2019/3
- 資料の概要:
-
『地方創生SDGs・ESG金融調査・研究会』は内閣府地方創生推進事務局が行う地方創生に向けたSDGs・ESG金融の活用方法を調査・研究するプロジェクトです。
- 資料名:
-
地方創生に向けたSDGs金融の推進のための基本的な考え方
- 発行組織名:
-
地方創生SDGs・ESG金融調査・研究会
- 発行年月日:
-
2019/3
- 資料の概要:
-
『地方創生に向けたSDGs金融の推進のための基本的な考え方』は地方創生SDGs・ESG金融調査・研究会が発行する文書で、地方創生のためのSDGs金融の推進に係る基本的な考え方を概説しています。
- 資料名:
-
金融行政とSDGs
- 発行組織名:
-
金融庁
- 発行年月日:
-
2020/1
- 資料の概要:
-
『金融行政とSDGs』は日本の金融庁が発行し、SDGsの達成に向けた取り組みを推進するための戦略が記載された文書です。
- 資料名:
-
Keidanren SDGs
- 発行組織名:
-
経団連
- 発行年月日:
-
随時更新
- 資料の概要:
-
『Keidanren SDGs』は、日本経済団体連合会(経団連)が運営するプラットフォームで、経団連がSDGsに取り組むための方針と会員企業・団体の多種多様な取組事例を複数のトピックに分けて紹介しています。
- 資料名:
-
企業のためのSDG行動リスト ver.1
- 発行組織名:
-
xSDGコンソーシアム
- 発行年月日:
-
2020/6
- 資料の概要:
-
『企業のためのSDG行動リスト ver.1』は、慶應義塾大学SFC研究所のコンソーシアム(※)のひとつである「xSDGコンソーシアム」が発行する資料で、企業がSDGsに取り組むための具体的な行動指針をリスト形式で紹介しています。
- 資料名:
-
「企業のためのSDG⾏動リスト ver.1」ご活⽤ガイド
- 発行組織名:
-
xSDGコンソーシアム
- 発行年月日:
-
2020/6
- 資料の概要:
-
『企業のためのSDG行動リスト ver.1 ご活用ガイド』は慶應義塾大学SFC研究所の「xSDG・ラボ」が作成した文書です。本ガイドでは、「企業のためのSDG行動リスト ver.1」の目的や概要について説明されています。
- 資料名:
-
SDG Industry Matrix日本語版
- 発行組織名:
-
GCNJ他
- 発行年月日:
-
2017/2
- 資料の概要:
-
『SDG Industry Matrix日本語版』は、国連グローバル・コンパクト(United Nations Global Compact)とKPMGによって発行されたSDG Industry Matrixを日本語訳した資料です。
- 資料名:
-
令和2年度上場企業及び中小企業における地方創生SDGsに関する調査
- 発行組織名:
-
内閣府地方創生推進事務局
- 発行年月日:
-
2021/3
- 資料の概要:
-
『令和2年度上場企業及び中小企業における地方創生SDGsに関する調査』は日本の内閣府地方創生推進事務局が発行する、地方創生とSDGsに取り組む上場・中小企業の調査結果をまとめた資料です。
- 資料名:
-
中小企業のSDGs認知度・実態等調査
- 発行組織名:
-
経済産業省 関東経済産業局
- 発行年月日:
-
2018/12
- 資料の概要:
-
『中小企業のSDGs認知度・実態等調査』は、日本の経済産業省関東経済産業局及び日本立地センターが実施したWEBアンケート調査結果の資料で、中小企業におけるSDGsの認知度や取り組みの実態に係る調査結果(平成30年12月実施)をまとめています
- 資料名:
-
SDGs進捗レポート 2023 ~GCNJ会員企業・団体の取組現場から~
- 発行組織名:
-
IGES他
- 発行年月日:
-
2023/3
- 資料の概要:
-
『SDGs進捗レポート2023 ~GCNJ会員企業・団体の取組現場から~』は、Global Compact Network Japan(GCNJ)が発行する資料で、GCNJ会員企業・団体のSDGsに関する取り組みや進捗状況の調査結果を紹介しています。